1時間の会議を文字起こししたら、句点もほぼない一本の文章が出てきた。誰が何を言ったのか全然わからなくて、結局録音を聞き直してる
——X(旧Twitter) / 30代女性・総務
無料の文字起こしアプリを使ったのですが、発言者が分かれません。有料にすれば分かるようになるのでしょうか
——Yahoo!知恵袋 / 40代男性
文字起こしは一瞬で終わるのに、そのあと誰の発言か仕分ける作業で2時間かかってる。これ本末転倒では
——X(旧Twitter) / 20代男性
「文字起こしできる」と「誰が話したか分かる」は別物です
まずここを押さえてください。この2つ、まったく違う技術なんです。
声を文字にするのが音声認識。誰が話しているかを区別するのは話者分離といって、別の仕組みが必要になります。英語では speaker diarization と呼ばれる分野です。
ツールの紹介ページには「AIで自動文字起こし」とだけ書いてあることが多いんですよね。だから「文字起こしができるなら、当然誰の発言かも分かるだろう」と思って選んでしまう。ここがすれ違いの出発点です。
なぜ無料のツールで起きやすいのか
理由がはっきりしていて、無料で使える文字起こしの多くが、OpenAIのWhisperという音声認識の仕組みをベースにしているからです。
このWhisper、音声を文字にすることに特化して作られていて、話者を区別する機能は設計に入っていません。性能が低いのではなく、担当外なんですね。
実際に話者分離まで実現しているサービスは、Whisperとは別の仕組みを組み合わせて動かしています。無料と有料で差が出やすいのは、まさにこの上乗せ部分なんです。
話者分離にも、苦手な場面があります
そして大事なのが、対応ツールに変えても100点にはならないという話です。ここは売る側の説明では省かれがちなので、先に知っておいてください。
崩れやすいのは、声質が似ている人が複数いるとき、発言が重なったとき、「はい」「なるほど」のような短い相槌、そして周囲のノイズが多いとき。オンライン会議で音質の悪い参加者がいる場合も苦しくなります。
つまり、AIが分けた結果を人が確認する工程は、どうやっても残ります。だからこそ、録音する時点で条件を整えるほうが結果的に効くんですよね。
今あるテキストを、AIで仕分ける
すでに一本になってしまったテキストも、あきらめなくて大丈夫です。AIにヒントを渡すと、かなりのところまで分けてくれます。
コツは、人数と、話の流れの手がかりを一緒に渡すこと。何も言わずに「分けて」と頼むと精度が落ちます。
コピペで使えるプロンプト例4つ
まずは仕分けから。手がかりを詰め込むほど当たります。
会議の文字起こしを、発言者ごとに分けてください。
【会議の情報】
・参加者:3人
・司会が最初に話し始めます
・司会は進行と質問が中心で、意見はあまり述べません
・1人は数字やスケジュールの話が多い担当者です
・もう1人は主に質問に答える立場です
・議題:来期の販促計画について
【文字起こし】
(ここに貼る)
【出力の条件】
・話者A/話者B/話者C の形式で分けてください
・実名は分からないので、記号のままで構いません
・元の文言は変えず、区切りだけ入れてください
・聞き取れていない箇所は勝手に補わないでください
2つ目が、この記事でいちばんおすすめしたいプロンプトです。AIに自己申告させます。
さきほど分けてもらった内容について、確認をお願いします。
【教えてほしいこと】
・話者の判定に自信がない箇所を、行番号とともに挙げてください
・「なぜ迷ったか」も一言添えてください
・話者が入れ替わっている可能性が高い箇所があれば指摘してください
推測で埋めた部分があれば、正直に申告してください。
私が録音を聞き直して確認します。
これをやると、聞き直す範囲が一気に絞れます。1時間まるごと聞き直していたのが、怪しい5箇所だけの確認で済むようになるんですよね。
3つ目は、記号を実名に置き換えて体裁を整えるプロンプトです。
話者の記号を、実際の役職名に置き換えてください。
・話者A → 司会(総務)
・話者B → 営業担当
・話者C → 部長
【あわせてお願いしたいこと】
・「えー」「あのー」などのつなぎ言葉は削ってください
・話し言葉のままで構いませんが、明らかな言い間違いだけ直してください
・発言の内容は要約せず、そのまま残してください
・議題ごとに見出しを付けて区切ってください
「要約せず、そのまま残して」を必ず入れてください。これがないと、AIは親切心で勝手に短くまとめてしまいます。議事録では発言そのものが証拠になる場面があるので、要約は別工程にしたほうが安全です。
そして4つ目が、その別工程です。
整理した議事録から、次の3つだけを抜き出してください。
決定したこと
持ち帰り・宿題になったこと(誰が担当かも)
次回までに確認が必要なこと
【条件】
・本文に書かれていないことは追加しないでください
・担当者が明記されていない項目は「担当未定」と書いてください
・決まったのか保留なのか曖昧な発言は、
「要確認」として別枠にまとめてください
曖昧なものを「要確認」に逃がせるようにしておくのがポイントです。AIは白黒つけたがるので、こう指定しないと保留の話まで決定事項に並べてしまいます。
AIが分けた話者はあくまで推測です。声を聞いているわけではなく、話の内容や文体から推理しているだけなので、間違っている前提で確認してください。特に、決定事項や責任の所在に関わる発言は、必ず録音で裏を取ってから議事録に載せてください。
また、会議の内容には社外に出せない情報が含まれていることがあります。AIサービスに貼り付ける前に、勤務先のルールを確認してください。取引先名や個人名を伏せ字にしてから処理する方法もあります。
ここに書いたのは私が調べた範囲と個人的な感想で、業務上の判断を保証するものではありません。
次からのために、見るべきポイント
新しいツールを探す前に、まず今使っている会議システムを確認してみてください。オンライン会議のサービスは、録画や文字起こしの機能に話者名を付けられるものが多いです。
ただし、契約プランや管理者の設定によって使えるかどうかが変わります。設定画面に「文字起こし」「トランスクリプト」といった項目があるか、一度探してみる価値はあります。
そのうえで、新しく選ぶときに見るべきなのは次の5つです。
- 話者分離に対応しているか。「話者識別」「スピーカー分離」など表記はさまざまなので、この機能があるかを最初に確認する
- 話者に名前を付け直せるか。話者Aを部長に置き換える操作が、あとからできるかどうか
- 無料枠の単位が何か。月あたりの分数なのか、回数なのか、1ファイルの長さ制限なのか
- 録音済みのファイルをアップロードできるか。リアルタイム専用だと、過去の音源を処理できない
- データがどこに保存され、学習に使われるか。社内会議を扱うなら、ここが実は最重要
比較サイトを見ていると1と3ばかりが目立ちますが、実際に困るのは2と5です。話者名を直せないと結局手作業になりますし、5は会社によっては使用そのものが認められません。
よくある疑問
- Q有料にすれば、確実に話者が分かるようになりますか?
- A
有料だから対応しているとは限りません。料金ではなく、話者分離という機能があるかどうかで判断してください。対応していても、声が似ている人がいたり発言が重なったりすれば崩れます。完璧を期待せず、確認の手間は残る前提で選ぶのが現実的です。
- QAIに分けてもらった結果、どのくらい信用できますか?
- A
下書きとしては十分ですが、そのまま提出できるものではありません。AIは声を聞いていないので、文脈からの推理でしかないんですよね。だから2つ目のプロンプトで自信のない箇所を申告させて、そこだけ録音で確認する。この流れが一番効率的です。
- Q録音の段階でできる工夫はありますか?
- A
効果が大きいのは、発言の前に名前を言うルールにすることです。「営業の田中です」と一言入るだけで、あとから分ける精度が跳ね上がります。オンライン会議なら一人ずつマイクが分かれているので、参加者ごとに録音できる設定があれば、それが一番確実です。
- Q会議の内容をAIに貼っても大丈夫でしょうか?
- A
勤務先のルールを先に確認してください。外部サービスへの入力を禁止している会社もあります。使ってよい場合も、取引先名や個人名は伏せ字に置き換えてから貼ると安心です。話者を分ける作業自体は、名前が伏せ字でも問題なくできます。
- Q文字起こし自体の精度が低くて読めません
- A
それは話者分離とはまた別の問題で、多くは録音環境が原因です。マイクを話し手に近づける、空調やプロジェクターの音から離す、この2つだけでもかなり変わります。社内用語や商品名がうまく変換されない場合は、単語を登録できるツールを選ぶと改善します。
レベル別ロードマップ
- LV1初級:今あるテキストを救う
手元で一本になっているテキストを、1つ目と2つ目のプロンプトに通します。全部聞き直すのをやめて、AIが自信がないと言った箇所だけ確認する。ここまでで作業時間は大きく減ります。
- LV2中級:入口を整える
次の会議から、発言前に名前を名乗るルールを提案してみましょう。あわせて、今使っている会議システムに話者名付きの文字起こし機能がないか設定を確認します。新しく契約する前に、手持ちで足りることが意外とあります。
- LV3上級:型を固定する
3つ目と4つ目のプロンプトを、自社の議事録フォーマットに合わせて書き換えて保存します。ここまで来ると、録音を渡してから議事録の下書きが出るまでが定型作業になります。
整うと、こんな未来が待っています
- 1時間の録音を丸ごと聞き直す作業から解放される
- ツールを選ぶとき、機能表のどこを見ればいいか分かる
- 「誰が何を持ち帰ったか」が曖昧なまま散会することが減る
- 会議の翌日に議事録が出せるようになり、催促されなくなる
この記事に書いたツールの機能や対応状況は、2026年8月時点で確認できた内容にもとづいています。文字起こしサービスは更新が早く、対応機能やプランの内容が変わることがあるので、導入前に各サービスの公式サイトで最新の情報をご確認ください。
まとめ:話者が分からない問題のチェックリスト
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 原因の理解 | 文字起こしと話者分離が別技術だと分かっているか |
| 手がかり | AIに渡すとき、人数と話の流れのヒントを添えたか |
| 自己申告 | 自信のない箇所を挙げさせて、そこだけ確認したか |
| 要約の分離 | 発言をそのまま残す工程と、要約する工程を分けたか |
| 次回の準備 | 名乗るルールや、手持ちツールの設定を確認したか |
文字起こしができた時点で仕事が終わった気になるんですが、実際にしんどいのはそのあとなんですよね。分ける技術は別物だと知っておくだけで、ツール選びも作業の順番も変わります。まずは手元のテキストを、AIに渡してみてください。

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